【ポンペイ展】偉大なる先人達

2022年8月25日

新型コロナ感染が始まって以来,この手の催しに行きました.

ポンペイというと,火山の爆発で亡くなった人の石膏型を思い描き期待したのですが,この展覧会で展示されていたのは入場してすぐにあった一体だけというのがチョッピリ残念でした.その代わり,当時の水道で使用されていた青銅製のバルブが展示されていました.

 

ポンペイが火山の噴火で壊滅したのは西暦79年だそうです.そのころ日本は弥生時代で,金属製品と言えば剣や鏡でした.その頃にポンペイでは上水道があって金属製のバルブがあったとは驚きです.そして,写真を見てもわかるように今見てもバルブの役割を満たすことは一目瞭然で,2千年まえのものとは言え今でも使えそうです.

このバルブ,その設計思想は今見ても現在と全く同じです.この頃は,金属の切削加工は困難ですから,やはり鋳造で製作されているようです.鋳造は型抜きをしなければならないので設計時にはそれに注意しなくていけませんし,かつバルブとしての機能も損なうことができません.また,同じ工場かもしれませんが,設計する人,型を作る人,鋳造する人など製造工程は分業化されていたのではと想像します.これを設計し製造した人たちは,設計や製造の知識を持った人ということで,それをどのようにして勉強したのか,高専のような技術系の学校があり,そこで学んだのだろうかと想像すると,とても感慨深い思いがします.そしてもしこれがポンペイで作られていたのなら,これを作っていた人達は,火山の災害から逃れることができたのだろうかと思ってしまいました.

いずれにせよ,これを設計し製作した人は,それを生業として生活していたエンジニアだったのでしょう.その生業をもってして,人々の生活を支え,便利な生活を作り出し,そして後世のエンジニアに影響を与えた偉大なる先人達たちです.これを設計製造したエンジニア達は,2000年後これを展示されるとは思っていなかったでしょう.そして,エンジニアを志す人達は,自分の考案したり作ったものが1000年後,2000年後にも評価される可能性のある仕事であることを自覚してほしいと思います.